はるか昔、それはまだ神が世界を支配していた頃。
その神に仕える多くの天使達のみがこの世に存在していた。
神は彼らに永遠の命を与える代わりに、ある一つの感情を固く封じた。
「愛する」という気持ちを。
愛は神が与えるものであって、天使達には存在無用な感情。
争いを避け、平和に暮らすために・・・
彼らは自分を作り上げてくれた神に忠実な忠誠を誓っていた。
その為、神が「下世界を作る」と言った時も必死で働いた。
寝る間も惜しんで、神のために、と。
数年後、何とか形になった下世界。
神は、下界に天使達とは対照的な「愛する感情」を持つ人間という新しい生命体を誕生させた。
この世に、自分達以外の生命体が誕生したことに天使達は喜び、人間達を暖かく見守った。
そんな中、人間のある感情に心を奪われていく天使達がいた。
「コイッテ、ナニ?」
「アイッテ、ナニ?」
名前などない、ただ二人の天使。
お互いの顔を見つめ合うと、理解できない感情がこみ上げてくる。
だがしかし、お互いにこの気持ちを何と言えばいいのか知らない。
そのような感情は与えられていないのだから。
だから、人間の行動を興味深く観察し、二人は学んだ。
これが「コイ」なんだと。これが「アイ」なんだと。
二人の天使の心に恋心が芽生えた瞬間だった。
天上界の平和を守る義務がある神は、それを許すはずはなかった。
二人を消してしまおうとも思ったが、あまりにも二人が愛し合っていることを思うと
そこまで残酷な行為は出来なかった。
「生きる」
その選択を与える代わりに、重い罰を与えた。
羽を殺ぎ落とし、記憶を消し、下界に落した。
落とされる前、二人は最後の会話を交わした。
「愛しています」「いつも貴方を思っています」と・・・
多くの天使達は二人の追放を悲しんだ。
くる日もくる日も涙を流し、やがて天上界に溜め込まれた涙は地上に雨となって何日も降り注いだ。
神はそんな天使の姿を見て、二度とこのような過ちを繰り返さない為に、地上との接点を全て断ち切ったという。
その後、二人は何度も何度も転生を繰り返す。
いつか、お互い同じ時代に生まれ、巡り合う事を信じて。
「イルカ先生、今日先生の部屋にお邪魔していいですか?」
「え、今日ですか?別にかまいませんけど」
世界のあらゆる場所で、たくさんの恋人同士の会話が交わされる。
「イルカ先生・・・そんなにあっさり他の奴を部屋になんて入れないで下さいね」
「・・・カカシ先生だからいいんですよ」
その言葉を聞いてカカシは嬉しそうにイルカに笑顔を向ける。
「じゃあ、またいつもの時間に」
「はい、また」
イルカはくるりとカカシに背を向けて我が家への道を急ぐ。
カカシは夕日の中に消えていくイルカの姿をずっと見つめていた。
(消えてしまいそうだ・・・)
気がつくとイルカの後を駆け足で追い、抱きしめていた。
「うわっ!?カカシ先生どうしたんですか、急に。びっくりするじゃないですか!!」
「今、こうしていないとイルカ先生が消えてしまいそうで・・・」
こんな真面目な顔をするカカシを、イルカは今まで見たことがあっただろうか。
「愛しています」
言われたことのない突然の言葉に、イルカは嬉しい反面、動揺を隠せない。
手のひらには緊張と焦りで汗をびっしりかき、心臓はバクバクと今にも破裂しそうだ。
ゴクリとつばを飲み込み、大きく息を吸い込むことで、やっとほんの少しの冷静さを取り戻す事が出来た。
「・・・カカシ先生。俺だって・・・俺だっていつも貴方を思ってますよ」
瞬間、二人の脳裏にチラリとある懐かしい情景がよぎる。
(この感じ、以前どこかで・・・いや、そんなはずある訳ない)
どこか懐かしい気持ちになりながらも、気のせいだと二人は強く抱き合う。
夕日によって出来た二つの影が一つに重なる。
果てしなく長い時間を経て、やっと巡り合えた二人。
しかし、それは決して実ることのない、コイ。
まだ天使だった二人が最後に交わした会話。
「愛しています」
「貴方をずっと思っています」
繰り返される運命の歯車。
前世の罪、それは一体どこまで二人を苦しめるのだろうか。
前世の罪、それは一体いつ消えるのだろうか。
運命とは、なんと皮肉で残酷なのだろう。
神は、一体いつ二人をお許しになるのだろうか・・・
今回、神サマを登場させてみました。
神話ものは基本的に好きなんですが、
何故か悪者になっちゃってごめんね、神サマ(汗)
ちゅーか、もっと構成をちゃんと考えてから書け!
と自分にツッコミを入れたくなりました。
こんな所まで読んでくれた方、有難う。
大好きだぁぁぁぁーーー!!