ピンポーン・・・

カカシの家に、チャイムの音が響く。

「カカシ先生、夜分遅くにすみません。ちょっといいですか?」

時計の針は、夜中の12時をさそうとしていた。

眠い目をこすりながら、カカシはドアを開ける。

「・・・・イルカ先生?こんなに夜遅くにどうしたんですか?」

「あの・・・カカシ先生、明日何の日か知ってますか?」

季節は冬。

イルカが一言二言話すたびに、辺りに白い息が広がる。

「えーと。まぁ、イルカ先生、寒いですから中へどうぞ」

そう言うと、カカシはイルカを部屋へ招き入れた。

初めてカカシの部屋に入るイルカは、少し緊張している様子だった。

「・・・えーと、この前言っていた課題はまだ期限ありますしねぇ・・・何の日ですか?」

一つのテーブルに二人が向かい合う。

「・・・あ、あのですね、明日の授業が変更になったんで、それを伝えに来たんです」

カカシはきょとんとしている。

「はぁ。そうですか…。それはわざわざ有難うございます」

「・・・・」

イルカは、何かを言いたそうに下を向いている。

「イルカ先生。で、何の日なんですか?」


ピピピピッ・・・

時計の針は12時をさし、静かな部屋にアラームが響く。

「・・・12時か。そういえば、今日は世間で言うクリスマスイヴですねぇ。
 
 …もしかして、イルカ先生、俺に会いに来てくれたんですか?」

カカシは、不敵な笑みを浮かべ、イルカをじっと見つめている。

「…っ、カカシ先生、また俺をからかってるんですか?俺がカカシ先生の一言一言に
 
 同様する姿をみてそんなに面白いですか…っ?」

イルカは、カカシに見つめられている事を意識し、やや早口で喋る。

「いやいや、そんなつもりはありませんよ。ただ、俺は貴方が好きだから、そうだといいなと思っただけです。
 
 気を悪くしたんなら謝りますよ」

「カカシ先生、俺は貴方のその素直さが羨ましいです。何事も、思った事をすぐ相手に伝える事が出来る。
 
…俺にはそれが出来ません」

「はぁ・・・すみません」

あたり一体、張り詰めた空気が漂う。

するとカカシはスッと席を立ち、隣の部屋に行ってしまった。

(俺は一体何をしに来たんだ・・・)

イルカは、自分を責める。

素直に、気持ちを伝えに来たって言えばいいじゃないか。

クリスマスイヴになる12時の瞬間、一緒に居たかったって言えばいいじゃないか。

どうして俺はいつもこうなんだ。

・・・・・カカシ先生に嫌われたくない。

一緒にいたい。失いたくない。

・・・・こんなに好きなのに。


イルカは気持ちを抑えきれなくなり、ガタッと席を立ち上がり
 
隣の部屋にいるカカシのもとへ通じるドアを勢いよく開けた。

するとカカシは何やら探し物をしているのか、箪笥の中をごそごそと探っていた。

「あ、あった。イルカ先生?明日渡そうと思っていたんですけど、さっき12時になったから
 
 もう今日はクリスマスイヴですよね。

実は俺、先生に渡したいものがあるんですよ。はい、コ・・・」

そう言いながら振り返った瞬間、イルカはカカシに強引にキスをした。

「イ、イルカ先生?」

カカシは驚いた表情でイルカを見る。

「俺、カカシ先生の事が好きです。

今日だって、喧嘩をしにわざわざ夜中に来たんじゃない…。今日が何の日かって?クリスマスイヴですよ。

イヴになる12時の瞬間に、貴方と一緒に居たかったんです。カカシ先生に会いに来たんです。

何日も前から会いたいと思っていたのに、くだらない事で怒ったり、喧嘩したり、

俺…、バカみたいじゃないですか・・・」

イルカは、ずっと言おうと思いながらも、言えなかった言葉を一気にカカシにぶつける。

「俺は、カカシ先生を愛してるんです。貴方に嫌われたくない・・・」

イルカは、感情が高ぶっているのか、涙を流していた。

すると、カカシはイルカの頬をつたっている一筋の涙をそっと手でぬぐう。

「イルカ先生、これ、俺からのクリスマスプレゼントです」

そう言うと、カカシはイルカに小さい一つの箱を差し出した。

「開けてください」

イルカは、そっとその箱を開ける。

すると、中には指輪が入っていた。

「カカシ先生、コレ・・・」

イルカは、信じられないという顔でカカシを見る。

「イルカ先生、俺も貴方を愛してる。一生、俺のモノでいて。…ね?」

そう言うと、カカシはイルカの薬指にそっと指輪をはめた。

イルカは、ボロボロ涙を流している。

「カカシ先生、俺に愛想をつかせんたじゃ…?」

するとカカシはイルカをギュッと抱きしめ、こう囁いた。

「イルカ先生、貴方が俺を嫌う事はあっても、俺が貴方を嫌う事は決してありませんよ。

嫌いになんか、なりません。俺は、貴方の為に生きてるんです。

ああもう、こんなに体も冷たくなって…。一体、いつから外に居たんですか?

イルカ先生、こんなことするのは俺のためだけにしてくださいね。

俺は、貴方が愛しくてしょうがないんです。今すぐにでも俺だけのモノにしたい」

そう言うと、カカシはさらに強くイルカを抱きしめる。

「カカシ先生、苦し・・・」

カカシは、イルカの声でハッと我に帰り、きつく抱きしめていた手を緩める。

イルカは、カカシの目をじっと見つめながらこう囁く。

「カカシ先生、俺は貴方だけのモノです。貴方以外の誰のモノにもなりません。

そして、俺も貴方の為だけに生きます」

そう言うと、イルカは再びカカシに全ての気持ちを込め、そっと口付けをする。

さっきの強引なキスとは全く違う、優しいキス。

カカシも、イルカを受け止める。

「イルカ先生、そんなことしちゃっていいんですか?俺、もうこれ以上気持ちを抑える事は出来ませんよ」

すると、イルカは頬を赤らめそっと頷く。

カカシは、イルカの体をグッと引き寄せ、深く、そしてとても熱いキスをした。

イルカの薬指には、今はめられたばかりの指輪が、満天のごとく輝いていた。
 


窓から見える景色は、いつの間にか暗闇から薄明るい雪景色へと変わっていた。

まるで、世界中の誰もが二人を祝福しているかのように

ひとつ、そしてまた一つと、空から天使達の贈り物が降り注いでくる・・・





ちょっと早いけどクリスマス小説です。書き逃げですいません(汗)
もし裏が出来たら裏話が!?…あるかもです(笑)
実は題名、辞書引いて考えてるときにふと目にした
『びしゃもんてん』という単語がどうしても離れなくて、最後まで迷ってました(笑)